靴で人を幸せにしたい

私が「和靴」をスタートさせた時に考えたこと。
それは、「靴で人を幸せにしたい」という思いでした。
あまりに青くさいと、お感じになるかもしれません。
でも、靴職人として靴にこだわればこだわるほど、その思いは強くなっていったのです。

例えば、既成靴の木型は、現代人に多いといわれる開張足に合わせて作られています。
多数派に合わせているとはいえ、一人一人足の形は大きく変わるため、靴に足を合わせざるを得ません。
しかも、そもそも幅広で横アーチ部分が低い開張足そのものが、健康な状態とはいえないのですから問題は深刻です。「足は第二の心臓」とまで言われるほど健康にとって大切であることが広く知られるようになってもこの状況は変わりません。経済効率を考えれば仕方のないことかもしれません。
しかし、靴職人の道を選んだ私は、このテーマを無視するわけにはいかなかったのです。

足に合っていない靴を履き続ければ、健康を害することもあります。
でも足に合った靴は、ほとんど手に入らない。
それならば、私だけでも理想の靴屋を目指そう。

そう考えて、この会社をスタートさせたのです。
その時の思いは、ブランド名に込めて掲げることにしました。

それが「和靴」なのです。

「和靴」に込めた三つの「和」

「和靴」には、私が考える理想を込めています。それが、「三つの和」なのです。

和みの心地

製品の理想
これは、履き心地の理想です。靴を履いたまま和むことができるように、本当に足と馴染むような靴。
年を重ねるごとに、履きやすくなっていく靴。そんな靴をイメージした言葉です。本来、家の中では靴を脱いでいる日本人にとっては、靴と和みとは相容れない言葉なのかもしれません。
だからこそ、それを究極の理想としたかったのです。「履いたままでも和むことができる靴」。

実際には届くことができないかもしれない目標を掲げて、常に努力と工夫と精進を忘れないようにすること。
それを私たちの基本姿勢にしたいのです。

和みの文化

工房の理想
靴は、西洋の文化です。本場は、ヨーロッパということになります。
そのため職人を目指す時には、海外で修行する方も多くいらっしゃいます。しかし、私は、日本の文化にこだわりたいのです。
私は日本の文化が大好きです。「労働を誇りとする文化」を持つ日本は、世界的に希有な存在です。
だからこそ「日本で学び、日本で修行した職人が、日本の文化や生活習慣に根ざした靴を創る」ことを大切にしたいのです。

日本には職人として素晴らしい先達の方々がいらっしゃいます。
そうした先輩方の思いを受け継いで、日本流を育てていきたいと思っています。

物と心の和

接客の理想
本格的なオーダーメイドの靴は、修理を施せば一生履き続けられます。
つまり、靴とお客様、そして私たち職人のお付き合いも、一生ものということになります。そう考えれば、私たちはただの製品をお届けしているのではなく、一生分のお付き合いをお届けしているとも言えるはずです。
とするならば、物と心を融和させて、一つひとつのサービスをご提供していくべきだと考えるのです。
そうすることで、お客様からご子息、その次のご子息へと、お付き合いを繋げていくことができる。

そんな思いで、仕事に取り組んでいきたいと考えるのです。